華子(なこ)

入信動機

食い入るような真剣なまなざしに圧倒される。
「今から40年以上も前の話。ヨーロッパを車で旅していた時に。
ドイツのアウトバーンでリュックに広宣流布と書いた青年を乗っけ
たのが事の始まり」

「まるで小説のような話ね?」
「デュッセルドルフまで行くという。偶然にも我々と同じだったのよ。
この町で初めてS学会員に出くわした。S学会が法華経の実践団体である
ことを知って驚愕した。これだこれだ心底そう思ったね、その時」

「法華経がすごいということはもう知ってたの?」
「なんとなくね。当時はマルクスや毛沢東が全盛だったけれど、私は
宗教とか哲学とか読み漁っていたんだよ。東洋仏法の真髄それは法華経」
「ふーん」

「それで日本に帰ってすぐに克彦に頼んで入信した。ところが当時S学会
は何やかやと叩かれていてね。日共のスパイじゃないかとか題目あげながら
爆弾作ってるんじゃないかとか。御本尊いただくまでに3か月かかったよ」
「ふーん、それでそれで?」

「入会して真っ先に驚いたことは学会員がそのすごさをあまりにも知らなさ
すぎるということ。勤行しない人がいるなんて唖然としたよ。ま、そのうち
学会にはいろんな人がいると気づきはしたがね。みんなが発展途上人と思え
ば大幹部も怖くないハハハ」

「パパは大幹部だったんでしょう?私も言われた通りに信心してきたつもり
だったんだけど。どうしてパパはこんな死に方をしなけりゃならなかったん
ですか?とても幸せとは思えません。私たちもみんな振り回されてもうへと
へとです」
< 14 / 21 >

この作品をシェア

pagetop