華子(なこ)

孫たち

そこにひろこと孫のリオとカイ。なこの妹トコが入ってきた。
「まあおじさん早かったわねえ。たすかるわ。私たちお風呂にも入ってないのよ」

歯切れのいい関東弁だ。
「こちらがアキの子中二のリオと小5のカイ」
でかい。女子柔道千葉代表。逆に小柄のカイ。二人ともちょこんと挨拶する。
明るそうなのがせめての救いだ。

「トコはわかるよね?」
「ああもちろん。おおきくなったなあ。なこよりでかい」
「うん」

両耳と鼻にピアス。手の甲と二の腕にタトゥー。刈上げでどこから見ても男の子だ。
「じゃあここでずっとお題目をあげてるからみんな色々とやってください」
「だけどお風呂にも入らなきゃあ?」
「弁当さえ届けてくれれば風呂は1,2週間なら大丈夫インドで鍛えてあるから」
「夜はこのサイドベッドで?」
「ああ、これだったら上出来1か月はいける」

「まあ頼もしい。じゃあ私たちは、なこ、まず役所だよね」
「そうそれとパパの仕事とマンションの後始末」
「トコとリオたちは後でお弁当と飲み物を届けてやって」
「オーケー、わかった!」
孫たちは元気に返事をした。

「あとはおじさんにまかせとけ!お題目をあげてあげてまくっとくから」
「じゃあよろしくお願いします」
皆で元気に声をそろえ挨拶をして一斉に出ていった。

空気が一変した後にまたあの静寂が戻った。呼吸器の音しか聞こえない。
ヒュウ―、カクン。ヒュウ―、カクン。ヒュウ―、カクン。
ところがよく見ると酸素吸収率が65%から75%に上がっていた。
『昨晩は50%を切って危篤だったのに。でも油断はできん。さあ題目だ』
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