No one can replace 『貴方の代わりには、誰もなれない。』
病室を出ていった彩乃に
圭吾は、唖然としていた。
唇が‥違っていたような‥
もう、一度確認したいと思うが
拒絶されたらと
思うと‥‥出来ずにいた。
次の日
紗綾乃は、何事もなかったように
病院に向かった。
圭吾自身も、手と足のリハビリに
毎日奮闘する日々に
キスや唇の事は気になっているが
そのままにしておいた方が
良いのではないか・・・
と、思っていた。
圭吾が、リハビリ中は、
紗綾乃は、絵本の作成をしていた。
毎回、絵を書いたり絵本の作成にはいると
紗綾乃は、回りが見えなくなる。
気をつけていたのだが
圭吾のリハビリが終わる時間に、
気づかずに没頭してしまい
「終わりましたよ。お迎えお願いします。」
と、看護師さんに言われて
慌てて、片付けをしたり
看護師さんが車イスで
圭吾を連れて着てくれて
びっくりしたりすることも・・・・
紗綾乃は、看護師さんに、
くれぐれも自分がやっていることは、
誰にも話さないで欲しいとお願いした。
彩乃じゃないとばれたら、大変である。
圭吾のリハビリも順調に進み
目の手術の日程が決まった。
目の手術が、終ると自宅療養となる。
もうすぐ‥‥‥
圭吾のそばには、いれなくなる。
紗綾乃の胸は、苦しくてたまらなかった。
でも‥‥
「大丈夫、大丈夫。
私には、大好きな絵がある、
絵本があるから。」
と、言い聞かせていた。
紗綾乃は、ギゼラにドイツでの住まいを
決めてもらい引っ越しの準備も始めていた。
要らないものは
母に処分してもらうように
お願いもしていた。
明日は、圭吾の目の手術がおこなわれる。
圭吾が、入院して二ヶ月半が、
経過していた。
圭吾の目の手術も無事に終わった・・・
まだ、目には包帯が巻かれている
圭吾の両親は、日本の病院に
入ってから一日だけ様子をみにきたらしい。
たまたま、紗綾乃は帰宅した後だったために
水上の両親と紗綾乃が合うことはなかった。
圭吾自身も彩乃との時間を
邪魔されたくなかったから
電話で、時々報告をいれて
来る必要は、ないと伝えていた。
お見舞いの人達にも
遠慮してもらっていた。
目の手術が終わり
当日は、病院に泊まり
一度、自宅に戻る事になり
三日後に目の包帯が取れる。
異常がなければ
定期的に通院となる、
事前に彩乃に圭吾の家の中の
レイアウトは、聞いていたので
スムーズに家に帰りついた。
後二日で彩乃が帰ってくる。
なんとか、乗り切らなければと
思う紗綾乃だった。
「無事に退院出来て良かったね。
私は、片付けをしてくるから、
圭吾さんは、ベットで休んでいてね。」
と、紗綾乃は圭吾に伝えて
リビングの片付け、洗濯、
夕飯の準備に取り掛かった。
この頃になって・・やっと
敬語なしで話ができるようになっていた。
圭吾が退院する前日に食材は調達して、
簡単な掃除は終わらせていた。
主人のいない家に勝手に入るのには、
抵抗があったが仕方ないと
あきらめて・・・・
紗綾乃が、
一人バタバタ準備をしていると‥
圭吾は、彩乃の側にいたくて、
壁づたえにリビングへ・・・
“ガタっ”
と、言う音に
紗綾乃が気づいて見ると
圭吾が、ソファにあたって倒れそうに
“あっ”
慌ててかけより、支えるが支えきれなくて
共に倒れてしまう
「大丈夫?何処も痛くない?」
と、訊ねる紗綾乃に
「大丈夫だよ、ごめんね。
彩乃こそケガしてない?」
と、圭吾。
「大丈夫だよ。」
と、慌てて離れようとする紗綾乃を
圭吾は抱き締めて・・・
キスをする。
紗綾乃は、逃れようとするが、
がっちりと後頭部と腰に手をまわされて
動けず・・・
圭吾から
何度も‥‥‥なんども‥‥
キスをされ‥‥‥
息ができなくて口を開けると
ぬるっと何かが口の中にはいり
びっくりして体をよじり、
離れようとするが
圭吾に尚更、きつく抱きしめられた。
何かが、圭吾の舌だとわかり
恥ずかしくなるが
圭吾は、お構いなしに
紗綾乃の舌を絡めとり
すいあげたり
歯列をなぞったり・・・
紗綾乃は、
息ができなくて、胸を何度か叩くと
圭吾は、やっと離れてくれた。
「やはり、唇がちがう‥」
と、言う圭吾に
「・・・グロスを‥‥変えたから‥」
と、震えながら‥
紗綾乃は、やっと答えた。
恐怖と切なさが、入り交じっていた。