No one can replace 『貴方の代わりには、誰もなれない。』
紗綾乃は、悪阻との戦いも
安定期に入り収まって
快適な妊婦生活を送りながら
絵や絵本を相変わらず書いていた。
そして・・予定日前に
男の子を無事に出産した。
本当に赤ちゃんらしくなく
きれいな顔をしていて、
病院でも編集部でも
彼は、人気ものになっていた。
彼は、圭都(けいと)。
圭吾の« 圭 »の一文字を
使わせてもらい
私の大好きな都市、
ブレーメンで生まれてくれたから
都市の« 都 »を使わせてもらった。
圭都は、すくすくと
可愛く、成長してくれて
ママ思いの優しい子に育ってくれた。
今日は、歩けるようになった
圭都を連れて
圭都の好きなブレーメンの
音楽隊の像の所に
散歩にきていた。
私と圭都のお気に入りの場所だ。
今日も圭都は、一人で
トコトコ、ブレーメンの像の所へ
もうすぐ、着く所で
男性とぶつかり
尻餅をついた。
あちゃ、泣くかな?と慌てて近づいて
すみません。と、言おうとすると
「ごめんね、僕。
痛かったね、ケガないかな?」
と、日本語が聞こえた。
「すみません。
ご迷惑おかけして、
大丈夫ですので。」
と、圭都を抱き上げると
男性の顔が見えて‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥圭吾さん?
「姉さん?」と再び日本語が‥‥彩乃?
「人違いでは?失礼します。」と
ドイツ語で言って、その場を離れた。
心臓が、バクバクと
音をたてていた。