ユメオモイ
あ…。
南の隣に座った彼に、あたしは気がついたら見惚れていた。
小さな顔に高い鼻。
黒の短髪。
何より、大きな目。
どタイプ………
柄にもなく、そん風に彼に見ほれていた。
「あ?なんだよ?」
あたしには珍しく周りの目を気にせずに長い間、彼のことを見ていたからか、
彼があたしの目線に気づいてしまった。

あっ、
と思った時には遅く、
何を思ったのか、彼が向かいの席からあたしの隣の席にわざわざ移動してきた。

「お前って…あれじゃね?かずまとかにいじめられてるやつだよな?」

「……………」

やっぱり、顔がいいだけ。
男なんでみんなクズだ。
デリカシーってもんがない。

「やめたりなよ〜きゃははっかわいそうじゃーん」

同じ班の、やんちゃそうな女の子が言った。

「え?でもそうだよなー?こいつ、かずまたちにいじめられてるやつだよな?え、ちがうの?」

「いや〜いじめられてっから知らないけど〜まぁ〜あははっそーゆうのは言っちゃダメだよ」

ダメ。

そんなことを、いう癖に
彼女は小馬鹿にしたようにあたしを見ていた。
本当はダメなんて言ってない。
ただ、それがこの状況で確かに最高のノリなんだ。そして同時に自分が今おちょくられてるこの女よりも上なんだって、
遠回しに啓示してるんだ。

はぁ、

早くこの話題おわらないかな、

注目されてるのがやだ。

なんでもいいからさっさと楽しい楽しい実験でも再開させれば?

あたしなんかに構わないでよ、鬱陶しい




「なぁ、お前、なんで実験参加しねぇの?真面目そうなのに」

また、あたしの隣に座り、
彼が訪ねてきた。

こいつがあたしの隣にいる限り、
あたしがまた何か言われるのは間違いない。

どうしてもこいつをあたしのそばから離したい。

「あんたに関係ないじゃん」


「うっわー可愛くね〜」

苛立ちに負け、あたしはついきつい口調になってしまった。

「うざいから、あっちいってくれない?」

「は?聞こえない。なんて?」

ぐっ。
彼の顔が近づいてくる。

ドキ。

顔が近づいただけで、
瞬間に反応してしまって、
瞬発的に彼から顔を遠ざける。

最近肌の調子が良くないし、
こんなにかっこいい人を近くに見る勇気なんてない。

そう思って顔を離すと

彼は不機嫌そうにあたしに言った。

「なんだよお前。俺のことそんなに嫌なのかよ」

「……」


何か言い返したら
また顔を近づけてくるかもしれない。

そう思うとなんともいえなくて、黙ってやり過ごす。

本当は話せて嬉しいし、もしあたしが普通の女の子だったらもっと楽しい話ができるのに。

だけどあたしは弾かれモノ。

あたしはおとなしく過ごさなきゃダメなんだ。
目立たないように。
そのためにはこんな目立ってること喋ってたらダメだ。
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