それでも、きみを。
「だから困るんだよねぇ、部活選び。」
蒼乃がそういいながら入部届けをひらひらさせているけど、その気持ちもわかる。
普通の学校だったら中学からの流れや新しく、って気軽に吹奏楽部を選べるんだけど、レベルが高いところだとそうもいかない。
練習量は想像を超えたものだったり、部活自体が女の園だから運が悪かったら嫌な思いはするし、実力勝負だから気まずい思いはしたりするしね。
かといって自分ならいけると思っても、実力の現実に打ちのめされかねない。
「でももう私は美緒さんがいても、吹奏楽だけはもうやらない。」
もうあんな想いはしたくないから。
「唯がそうなら、わたしもやらないよ。」
「蒼乃、もう私に付き合わなくても、蒼乃がやりたいなら」
「はーい、もう口チャックして。」
「んなっ、モゴモゴっ。」
入部届で口塞いでこないでよ、もう、……ありがとう。