♡〜ラブアドバンス〜独女歩数計オムニバス形式♡
ロゴ入りTシャツ
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部屋には、明かりがなかった。
今日は、悠人が来ていないようだ。鍵を開け玄関へ入り、モワッとする空気に顔をしかめる。
一直線に窓へ向かい、急がないと窒息するような勢いで窓を全開にした。
やっと、淀んだ空気がましになっていく。
窓の外に顔を出し、ベランダに干したままの洗濯物を眺めた。
サンダルを履いて、ベランダに干していたものを次々と取り込みカーテンレールへ吊るす。
全て吊るし終えて網戸とレースのカーテンを閉めた。
部屋の中へ振り返り、ふと、今朝はなかったものに気がつく。
鍵と服が畳まれてダイニングテーブルの上に置いてあった。
近づいてみて置いてあった鍵を手にし、握り込んだまま服を広げてみる。
英語のロゴ入りTシャツ。
悠人は、私のヒモみたいになるのが嫌だからと、私には一切何もねだったりしなかった。
ただ、気の知れた友達みたいに好き勝手に出入り出来るように鍵を渡した。
ロゴ入りTシャツは、誕生日に私が唯一悠人へあげたものだ。
Tシャツの中から、ハラリと落ちてきた紙切れ。
※※※
冷蔵庫にフライドチキンが
あるよ。
チンして食べな
※※※
いつもみたいな走り書きのメモ。
鍵とTシャツを握りしめたまま、冷蔵庫に向かった。
冷蔵庫の扉を開ける為、取っ手に手をかける。
やけにいつもより重く感じる扉を開けると、平たい皿に乗ったラップをかぶせたフライドチキンを見つけた。