♡〜ラブアドバンス〜独女歩数計オムニバス形式♡
映画が終わり、エンドロールが流れ始めのこっていたポップコーンを掴んで口に押し込んだ。
劇場内の電気が点いて、ガタガタと動き出す人達。
カップホルダーからカップを持ち上げる時に、ふと座席番号を見て目を見張った。
Gの1。
あれ、Fじゃないなんて!
身を乗り出して前の席の座席番号を見た。
まだ、前に座る若い男の席には、間違いなくF1と番号が示されていた。
「あのぅ、すみません」
男の横に立ち、かがんで話しかけてみた。
「はい?」
私の方へ顔を向けた若い男。キリッとした瞳が印象的だった。
「あの……もしかして、私が座ってた席……貴方の席でしたか?」
映画が始まる前に私が座っていた席まで来て、チラリと私を見た状況から考えるにたぶん、この人の席だったんだと思えた。
「構わないですよ」
言いながら立ち上がった男は、割と背が高かった。
「気にしないで。どこで観ても同じ映画ですから」
シャープな顔立ちの男が、フッと笑みを漏らした。
階段を下りようとする男の腕をガシッと掴んでいた。
振り返る男は、とても驚いたような表情をして私を見おろした。
「ごめんなさい」
頭を深く下げて自分の過ちを謝罪した。
ぎゅっと唇を噛み締め、履いていた買ったばかりの白いミュールをじっと見ていた。