明日はきっと晴れるから



結城くんは、ゆっくりと頷いた。


「俺にとっては大切な思い出で、少々恥ずかしい話でもある。

宗多さんが思い出せないのも、無理はない。

小さな頃は……俺であって、俺じゃなかったからさ……。

宗多さんの都合のいい日って、いつ?」



「お盆にお墓参りに行く以外は、何も予定がないよ。
夏休みは、ほとんど暇で……」



部活には入っていないし、一緒に遊べる友達もいない。


夏休みはたくさんの本を読めるから私にとっては幸せな期間だけど、他の人からは淋しい人間と思われるかも……。



言ってしまってからそれに気づいて恥ずかしく思っていたら、

「俺も同じようなものだよ」

そう言ってフォローしてくれてから、結城くんは日にちを決めてくれた。



「じゃあ、7月29日にしよう。
駅の西口改札前に10時に待ち合わせ。
いいかな?」



気になって仕方なかった過去の物語をやっと知ることのできるワクワク感と、

結城くんと一緒に出掛けられるドキドキに、今から胸が高鳴ってしまう。



「うん、楽しみにしてるね!」



満面の笑みで了承すると、結城くんが眉をわずかにハの字に傾けた。



「欲を言えばそれまでに、少しだけでも俺のことを思い出してくれたら、ありがたいんだけどな……」



過去の物語を、ハッキリ記憶していて“ 大切な思い出 ”と言ってくれる彼と、すっかり忘れてしまった私。


このギャップには、心から申し訳ないと思う。


結城くんの言う通り、約束の日までに少しでも思い出せるといいのだけど……ちょっと自信がないなーーーー。




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