明日はきっと晴れるから
結城くんはわかったと言ったのに、その場から動こうとしない。
廊下から教室に足を踏み入れる私を、見守ってくれていた。
結城くんが心配していることは、たぶん私が不安に思っていることと同じ。
みんなに変な目で見られるかも知れない……。
お父さんのことで、何か酷いことを言われるかも知れない……。
ううん、そんなことない。
みんな夏休みは別のことに夢中で、事件については気付いていないか、忘れているか……大丈夫なんだよきっと……。
不安と大丈夫だと思いたい気持ち、二つを抱えて静かに教室に入って行った。
すると、それまで明るい笑い声に包まれていた教室の雰囲気が、急に変わってしまった。
やけに静かになった後、「あっ……」と誰かが小さな声を上げたのを皮切りに、あっちこちで、ヒソヒソと囁き合う声が聞こえてきた。
やっぱり……と思った。
でも、まだ淡い期待に縋りたくて、教壇の近くにいた女子3人に「おはよう……」と小さな声をかけてみた。