明日はきっと晴れるから
母親が私を連れて家を出たのは、1年前のこと。
原因は私の小学校入学準備。
姉の名前で呼ばれ、女の子の格好をさせられているせいで、幼稚園には通わせてもらえなかった。
でも小学校は義務教育だから、行かせないというわけにはいかない。
結城 紗矢香(サヤカ)。
姉の名前で入学手続きをしようとしていた母親が直面したのは、考えたくない……考えると心が壊れてしまう現実だった。
『紗矢香ちゃん?
ええと、お子さんは真臣くんでしたよね?』
『こちらは児童相談所の高橋と申します。
真臣くんの入学手続きのことでーー』
『いい加減に目を覚ませ!
紗矢香は死んだんだよ。真臣に女の格好をさせるのは、すぐにやめろ!』
一年前、私の入学準備が進まないことで、児童相談所や役所から、『真臣くんのことで』としょっちゅう電話が掛かってきた。
それまで黙認していた父親は、母親を叱るようになり、母親は私を連れて家を飛び出した。
居場所を突き止められては引っ越しを繰り返し、今住んでいる場所は3ヵ所目のウィークリーマンション。
私と同じ歳の子供たちが小学校1年生として入学してから4ヶ月経った今も、私は小学校に通うことができないでいるーー。