明日はきっと晴れるから
「もうやめてよ! この子はさーやだって、言ってるじゃないの!真臣って誰?
やめて……やめてよ……イヤァァッ‼︎ 紗矢香は死んでないのに‼︎」
父親と話している途中で、母親は絶叫して携帯電話を床に投げつけた。
それを見て私は、心を閉ざす。
「ごちそうさまでした」
半分残した朝食のパンを置いて立ち上がり、部屋の隅に座って読みかけの児童文学の本を開いた。
私にとって本を読むという行為は、無意識に近い。
何も考えないように……。
何も疑問に思わないように……。
そうして今日も私は、物語の世界に逃げ込んだ。
母親は床に突っ伏して、泣いている。
黙って本を読む私の心には、サアサアと雨が降っている。
心の中は、いつも雨。
これが、私の日常。
午前9時15分。
「お母さん、図書館に行ってくるね」
近くにある図書館の開館時間を待って、家を出た。
引っ越す度に近くに図書館がないかを、真っ先に探した。
ひとりで遠くに行かせてくれないので、最初の引っ越しの時は図書館に行くことができずに困った。
でも今回の引っ越しは、住んでいる場所の目と鼻の先に図書館があって、心から良かったと思っていた。