明日はきっと晴れるから



「ゆきちゃん?
ねぇ、ゆきちゃんってば」


菜乃花に肩をポンと叩かれて、ハッと我に返った。


ここは区民センターの談話室。

菜乃花に午前中に読んだ本の感想を聞かせてもらっている最中に、心がトリップしてしまっていた。


自分は……自分って……自分とは……。

解答を見つけられないのが、苦しくて仕方ない。



菜乃花は心配そうに、私の瞳を覗き込んだ。



「ゆきちゃん、どこか痛いの?」


「痛くないよ。どうして?」


「そんな風に見えたんだもん」


「大丈夫。少し、考え事をしていただけ」



菜乃花は私のことを何も知らない。

名前も性別も、誤解したまま。

あと3日で、お別れになるんだよな……。



本当は女じゃなくて男だと言ったら、菜乃花はどう思うかな?

騙したまま、去るのは嫌だな……。


そんな気持ちになり、つい言ってしまった。



「あのさ、私が私じゃなかったとしたら……どうする?」


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