明日はきっと晴れるから
それでも、私の心は震えていた。
私は私。それ以外にはなれないのか……。
母親が『さーや』と呼ぼうとも、女の格好をさせられようとも、私は私。
結城真臣なんだ。
それに気付いた途端に、強烈な自我に襲われる。
自分は真臣だ。姉の代わりはもう嫌だと、心が悲鳴を上げていた。
自分の境遇に疑問と不満を持ったのは、生まれて初めてのこと。
耐え難いほどの苦しさが急にこみ上げてきて、どうしていいのかわからなくなる。
その苦しさは、涙となって溢れ出していた。
突然泣き出してしまったことで、菜乃花を随分と驚かせてしまった。
「ゆきちゃん、やっぱりどこか痛いんでしょ?
もう帰った方がいいよ。私、お家まで付いて行ってあげるから。ね?」
心配してくれる菜乃花を、強く抱きしめた。
「痛くないよ」と耳元で言ってから、手の甲で涙を拭い、菜乃花を離して立ち上がった。
「あ……。
ゆきちゃんが、笑った……」
笑うのが苦手だった。
感情を出すのが難しいのは、今まで心を殺していたせいかもしれない。
でも、今、無理して笑ってみた。
ぎこちない笑顔だと思うけど、菜乃花を安心させたくて。