明日はきっと晴れるから
「菜乃花、教えてくれてありがとう。
俺の中にも、小さいが、ちゃんと自分というものがあったみたいだ。
まだ分からないことだらけだけど、これからしっかりと自分を見つめて、いつか菜乃花みたいに自分らしさを見つけてみせるよ」
「俺……?
ゆきちゃん、何だか急に、男の子みたいだね……」
不思議そうな顔をしている菜乃花に、別れを告げた。
次に会えるのはいつになるのか、わからないから。
「菜乃花、さよなら。
またね……」
「帰るの? 私もこの本をカウンターに返したら、お家に帰るよ。
ゆきちゃん、またね!」
「また、いつか……」
菜乃花に背を向け談話室から出ると、階段を駆け下りて外へと飛び出した。
走ってウィークリーマンションの一室に飛び込むと、母親が玄関先まで出てきて、
「さーや、お帰り」
と貼り付けたような笑顔で言った。