明日はきっと晴れるから
「お母さん、その呼び方やめて。
俺は、真臣。姉さんじゃない。
身代わりは、もう嫌だ。これからは自分らしく生きていくから」
母親を押しのけてリビングに入ると、ワンピースを脱ぎ捨てた。
戸棚の引き出しからハサミを取り出し、自分の長い黒髪を左手で握りしめた。
母親は血相を変えて俺に向かってくる。
その手をかわし、狭い家中を逃げ回りながら、耳下までの長さに髪を切り落とした。
全ての髪を切り終えた俺を見て、母親は姉の名前を叫びながら、泣き崩れていた。
テーブルの上には、母親の携帯電話が置いてあった。
それを手に取り、父親に電話を掛けた。
三回コールで電話に出た父親は、『仕事中は……』と、母親に向けての文句を口にしている。
それを遮り、父親に初めて自分の気持ちを伝えた。
「お父さんにお願いがあります。
俺を引き取ってください。
姉の代わりは嫌だ。男として、結城真臣として、小学校に通わせてください。
お願いします」