明日はきっと晴れるから
電話の向こうで父親の、息を飲む音が聞こえていた。
数秒の沈黙の後、父親が涙声で言った。
『わかった。今すぐに迎えに行く。
今まで、すまなかったな。真臣……』
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父親と一週間ほど生活を共にしてから、父方の祖父母の家に預けられた。
父親は帰りが遅く、忙しい人なので、その方がいいということだった。
母親は、病院に入院させたということを父親から聞いた。
もう二度と母親には合わない方がお互いのためだという話もされた。
祖父母とは赤ちゃんの時に何度か会ったそうだけど、俺の記憶にはないので、初めましての感覚。
「お世話になります」
と頭を下げた俺の頭に、シワだらけで温かい、大きな手の平が乗せられた。
祖父母は優しい人だった。
『真臣』と呼んで、いつも俺が何を考えて何をしたいのか、話を真剣に聞いてくれたーー。
それっきり、長いこと菜乃花には会えなかったけど、心の中にはずっと彼女の言葉があった。
『ゆきちゃんは、ゆきちゃんだよ』
目を閉じれば、可愛い声で再生される。
自分を見失っていた。
自分が何者かわからなかった。
自分らしさなんて、考えたこともなかった。
そんな俺を菜乃花は救ってくれた。
ありがとう、菜乃花。
いつかまた、君に会いたいーーーー。