明日はきっと晴れるから
窓を指差して、私は言った。
「結城くんの言った通りだね」
雨はいつかは上がる。
明日はきっと晴れる。
そう思えば、下を向かずに前を向いて歩いていけるんだよね……。
結城くんには感謝してもしたりないくらいの想いがある。
大切なことを教えてくれたことも、幼い頃の私を思い出させてくれたことも、
こうして側にいてくれることも全部に、ありがとうって言いたい。
それと、線路に飛び込もうとしていた私を助けてくれたことも……あっ……。
昨日の自分の愚かな行為を思い出していたら、ものすごく恥ずかしいことも一緒に思い出してしまった。
あの時、私、結城くんにキス……されたよね?
急に頭に浮かんできたキスシーンに今更ながらに真っ赤になっていると、窓の外の雨上がりの空を見ていた結城くんが、私に視線を戻した。
「菜乃花、顔赤いよ」
いつもの淡々とした口調で指摘され、あたふた慌ててしまう。
「ご、ごめんね、えっと、あの時のキスが……ああっ! なんでもない、なんでもないの!
あ、そうだ、この前読んだ本のね……」
ごまかそうとした私の隣で、結城くんが椅子から立ち上がった。
長机に右腕を突き、腰を落として、左手で私の頰にそっと触れた。