明日はきっと晴れるから
どうしたらやんわりと、カラーリングを断ることができるかな……。
そう考えて思いついたのは、値段だった。
ふたりに渡されたこの商品は、1520円。
私のお小遣いは月に3千円で、お財布の中にはもう千円しか残っていない。
そうだ、値段を理由にすればいいよね。
そもそも本当に買えないんだから、仕方ないよね。
「あのね、これ、買えないの。お小遣いが足りなくて……。
せっかく選んでくれたのに、ごめんね」
小さな声でそう言うと、ふたりは「そっかー」「残念。また今度だね」と、納得してくれた。
ホッとしたのは、束の間のこと。
急に背中にずっしりとした重みを感じて、「キャア!」と声を上げた。
誰かが後ろから私に抱きついて、体に腕を回している。
美緒ちゃんが呆れた顔して言う。
「楽人、やめなって。
菜乃花、マジで固まってるから」
「固まってんの? あ、本当だ。
ちょっと驚かそうとしただけだよ。ごめんね〜」
体に回された春町くんの腕が外れて解放されても、まだ心臓がバクバクと大きな音を立てていた。
春町くんに、抱きしめられちゃった……。
び、びっくりした……。
真っ赤な顔でドキドキしているのは、私だけみたい。
春町くんも美緒ちゃんも由希奈ちゃんも、いつもの事のように平然としている。
紺野くんもいつも通りだけど、スマホ画面を見て指を忙しなく動かしているから、きっとゲームをしているのだろう。