明日はきっと晴れるから
春町くんは笑いながら言う。
「いーって、いーって。大した額じゃないし、遠慮しなくていーって。」
美緒ちゃんと由希奈ちゃんも言う。
「楽人がいいって言ってんだから、いいじゃん!
買ってもらいなよ」
「そうだよー。楽人の気持ちが変わらない内に早くレジ行こ?
大丈夫!ぜーったい茶髪の方が可愛くなるから!」
私は「うん」と言っていないのに、話は茶髪にする方へとどんどん流れていく。
「あ、あの、私は……」
必死に気持ちを口に出しているつもりなのに、声が小さいせいか、誰も聞いてくれない。
春町くんはカラーリング剤の箱をレジに持って行き、会計を済ませてしまった。
お店から出ると、
「明日の菜乃花ちゃんの髪、スゲー楽しみにしてるから。じゃあね〜」
そう言って、紺野くんと二人で夕暮れの繁華街を駅とは逆側に歩き去った。
私はその後、ハイテンションの女子ふたりに駅近くのマンションに連れて行かれた。
ここは由希奈ちゃんの自宅だと言う。
おうちの人はまだ仕事なのか、誰もいなかった。
美緒ちゃん達はお風呂場に移動して、春町くんが買ってくれたカラーリング剤を箱から出して準備している。