明日はきっと晴れるから



ふたりの中で私の茶髪は、既に決定事項。

キャアキャアと会話が弾んで、とっても楽しそう。



脱衣所でその様子を見ながら、私はとっても困っていた。


どうしよう……どうしよう……。


ここまで来て嫌だなんて、言い出し難い。

ドラッグストアの中にいた時よりも、ずっとずっと言えない雰囲気。



もし茶髪にしたくないと言ったら、『絶対かわいくなるから、やった方がいいよ!』と説得されるのはわかっている。


それでも嫌だと言ったら、どうなるのかな……。


『春町くんに買わせておきながら、今更やめるとかヒドイ!』と、言われてしまうかも……。


可愛くなることを拒否するなんて、やっぱりダサ子だねって、思われるかも……。


明日からはもう、仲間に入れてもらえないかも……。



「準備できたよー! 菜乃花、おいでー」



お風呂場で美緒ちゃんが、楽しそうな顔して私を呼んだ。



だめ……。

私には断れない……。



一人ぼっちで淋しくても、それは小さな頃から度々味わってきたし、慣れっこだから辛くないと思っていた。


でも、一度手に入れたものを失うのは辛いと思う。


友達が元からいないことには耐えられても、今いる友達を失うのは怖い。



『これでもう一人ぼっちじゃなくなるよ……良かったね……』


そう言って、地味な私を仲間に入れてくれた春町くん。

彼の優しさを踏みにじるのも……怖かった……。




< 31 / 257 >

この作品をシェア

pagetop