明日はきっと晴れるから
教室内の明るい賑やかさは、8時半のチャイムと先生が入ってきたことで静かになった。
新しい担任の猪熊先生は、白髪がちらほら目立つ40代の男の先生。
1年生の時は古文の教科担当だった。
テストが返ってくると点数の横に『がんばったな! 凄いぞ!』『君ならもっとできる。次回に期待してるぞ!』と、言葉が書いてあって、温かい応援に顔がほころんだ。
猪熊先生が担任であることは、私にとって嬉しいことだった。
先生が出席を取る。
丸眼鏡の奥の優しい垂れ目が、教室内の生徒たちを一人一人確認するように見て、名前を呼びあげる。
「宗多 菜乃花」
私の名前が呼ばれ、小さな声で「はい」と返事をした。
みんなみたいに元気に答えられない私の返事に、猪熊先生は「がんばれよ」と励ますかのように大きくうなずいてくれた。
ホームルームの後は、体育館に移動しての始業式。
校長先生の長いお話が終わってゾロゾロと教室に戻ってくると、私の苦手なことが待っていた。
それは自己紹介。
今日は授業がなく、自己紹介と委員会の案内などがあっておしまいになる。
午前中で帰れることにみんなは喜んでいるように見えるけど、私は自己紹介に比べたら7時間授業の方が嬉しいと思ってしまう。