明日はきっと晴れるから



「俺は君が好きだった」



「え……? 私を……好き?」



「好き “だった” 。 過去形だよ。

俺は君らしい君が好き。今の宗多さんは自分を見失っているから、好きじゃない」



これって、告白……じゃないんだよね。

過去形だし、間違っていると言われているんだもん。


でも、例え過去の気持ちだったとしても、私なんかを好きだったなんて……本当?


一年生の時に結城くんとの接点は全くなかったと思う。

私は今日が初対面だと思っているのに、どうやって好きになったと言うの?



変な告白をもらって、恥ずかしい気持ちよりも疑問が勝ってしまう。


首を傾げる私を見て、結城くんは説明を足してくれた。



「宗多さんは気づいていなかっただろうけど、すれ違うたびに俺は君を目で追っていたよ。

校外学習の時、みんなが湖に向けて我先にと走っていく中、君だけは野花を踏まないように足元に気をつけて歩いていたよね」



う、うん。

だって、せっかく綺麗に咲いているのに、踏みつけるなんてできないよ……。



「学校の自動販売機の下に腕を入れて、埃まみれになっていたこともあった」



それは、一年生の時のクラスメイトの男子がお金を落としちゃって困っていたから。

男の子の腕だと入らないけど、私の腕ならギリギリ届くと思って……。



「図書室で表紙カバーが破れている本を見つけて、すごく悲しそうな顔をしていることもあったよね」



あ……。

あの時のこと、見られていたんだ。


一年生の秋。図書室に新書が入ってわくわくして読みに行ったら、表紙カバーが大きく裂けていて悲しかった。


読んでいる内に本がくたびれていくのは仕方ないと思うし、古書には味があって日焼けした感じとかならむしろ素敵だと思うけど、

新しい本が破れているのは心が痛い。


だからあの本は、司書の先生に言って破れた表紙カバーの裏に紙を貼り、私にできる限りの修復をしてみた。


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