明日はきっと晴れるから



聞き返した私の言葉は、彼に届いていないみたい。


結城くんは学生鞄を手に立ち上がり、私を見下ろして最後にもう一度注意した。



「上辺だけの優しさに惑わされるなよ。
振り回されて自分を見失ってはいけない。

君は君らしくいるべきだ。

そう教えてくれたのは、宗多さんだったのにな……」



スラリとして均整の取れた、結城くんの後ろ姿が遠ざかる。


校舎の角を曲がり、中庭から消えてしまった。


夕暮れの淋しい中庭には、私と彼が貸してくれた文庫本だけがポツンと取り残されている。


ベンチの上に落としてしまったその本を手に取り、傷めてしまっていないかをひっくり返して確認しながら考えていた。



『忘れてるみたいだな……俺のこと……』

『そう教えてくれたのは、宗多さんだったのにな……』



結城くんがまるで過去に私と話したことがあるような言い方をしていたのが、気になった。



結城くん……ゆうきくん……ゆーきくん……。

あれ……?


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