明日はきっと晴れるから
両手の指先と声が震えていた。
みんなが私を見ているので、恥ずかしくて顔を上げることができない。
足元に向けて、私なりに必死に言葉を口にしていると、
「聞こえませーん。声、小さすぎー」
男子の誰かの注意が聞こえた。
「ご、ごめんなさい……あの、私の趣味は本を読むことで……えっと……」
自分では声を大きくしたつもりなのに、今度はクラスメイト数人から笑いの混ざったツッコミを入れられてしまう。
「全然聞こえなーい」
「宗多さんて、声出ないの? 恥ずかしがり屋なだけ?」
「それとも、可愛く見せようと企んでいる系?」
アハハと笑われて、私は真っ赤な顔で震える唇を引き結んだ。
もうだめ……。
これ以上、しゃべれない。
恥ずかしさに加えて、笑われてしまったことで頭の中が真っ白になってしまった。
潤む瞳で助けを求めるように、そろそろと顔を上げて猪熊先生を見た。
先生は教壇から何か言おうと口を開きかけたが、その前にクラスメイトのひとりが大きな声でみんなに向かってこういった。
「笑うなよー。こーゆーのがすごい苦手な子もいるじゃん。
女の子いじめてるみたいで、俺はちょっと嫌だなぁ。
菜乃花ちゃん、無理しなくても少しずつクラスに馴染めばいいよ。
今はよろしくお願いしますとだけ言って、終わりにしちゃいな」