明日はきっと晴れるから
そう言ってくれたのは教室の真ん中あたりに座っている男子生徒で、名前は春町 楽人(ハルマチ ラクト)くん。
まだ自己紹介の順番が回ってきていない彼の名前を、私は知っていた。
だって、1年生の時から有名人だったから。
校則違反の明るい茶髪は耳下までの長さで、部分的にゆるいパーマをかけている。
まるでテレビに出てくるアイドルみたい。
ワイシャツのボタンは3つ目まで開けていて、ネクタイを緩め、制服を着崩している。
ピアスが右耳に2つ、左に1つ。
非行の噂は聞いたことがないので不良とまでは言えないけど、
とても目立つ見た目だから、私のいる地味な世界と大きくかけ離れた場所にいる人で、苦手意識を持ってしまう。
そんな彼が話したこともない私を『菜乃花ちゃん』と下の名前で呼び、喋れなくなった私を助けてくれたのでとても驚いていた。
どうして……?
女子をいきなり下の名前で呼ぶことも、助けてくれたことも、春町くんにとっては普通のことなのかな……?
2、3秒固まってから、言われた通り「よろしくお願いします……」とだけ何とか口にして、着席した。