明日はきっと晴れるから
保健の先生は私のお母さんと同じ位の年齢に見える。
濃いめに描いた眉をハの字に傾け、さっき春町くんが出て行ったドアをチラリと見てから、大きなため息をついた。
「違うわよ。宗多さんを抱えて保健室に駆け込んできたのは、別の男子生徒。
春町じゃないわよ」
「えっ……?」
「あの子、そんな嘘をついたのね。
かっこばかり付けて、どうしようもない男だわ。
あの子の将来どうなっちゃうのかしら?
猪熊先生に報告しておかないと」
私を運んでくれたのは、春町くんじゃないの……?
じゃあ、一体誰が……。
遠のく意識の中で見た気がするのは、黒いサラサラの前髪と、切れ長の二重の瞳。
自信はないけど『菜乃花、しかっりしろ』って、言われた気もする。
あれ? 『菜乃花』?
私のことを名前で呼び捨てにする男の人は、お父さんと親戚のおじさんくらい。
この学校に私をそんな風に呼ぶ人は、いないはずなのに……。
疑問が疑問を呼び、ますますわからなくなって、ベットの上に身を起こした。
「宗多さん、まだ横になっていないと……」
「先生! 私を運んでくれた人の、名前とクラスわかりますか?」