番のエージェント
相手は車。

しかも大型車両のハマーだ。

この渋滞では思うように進めまい。

霸龍闘がバイクを拝借したのは、そんな計算もあっての事だった。

「あれ…」

瞬時にハマーのナンバーを記憶していたリィが、指差して言う。

「よしっ!」

ハンドルから両手を放し、マテバを保持する霸龍闘。

後部シートのリィが手を回して、ハンドルを握る。

言葉を交わさずとも取れる連携。

霸龍闘はそのまま足だけでバイクを変速しつつ、マテバでハマーのタイヤを撃ち抜く!

パンクし、スピードの落ちるハマー。

もう一台のハマーと激突し、環状道路のガードレールに接触して停止。

しかしもう一台はそのまま逃走を続ける。

「こちらエージェント・リィ…該当車両を一台停車させた…包囲よろしく…引き続き逃走中のもう一台を追う…」

『こ、こらっ、霸龍闘君!リィちゃん!』

この無線からの慌てた声は、アリスカの旦那。

先輩エージェントの田中 啓太(たなか けいた)だ。

「ごめん啓太さん、あとでコーヒー奢るから許して」

高速のバイクに跨ったまま、霸龍闘はニカッと笑った。

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