あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
5.すぐ先の幸せと、まだ先の幸せ
―――― 5. すぐ先の幸せと、まだ先の幸せ
*****
「葉月さん。これ、今度の予算内でプランを組んでみたんだけど、目を通してもらっていいかな?」
「……わかった」
静かな口調で声をかけてきた架くんが、USBメモリーをポンと置いて去っていく。
あれから数日が経過したけれど、彼は何事もなかったかのように以前のまま変わらない。
こちらとしても態度を急変されては困ってしまうので、“いつも通り”というのは、ありがたいのだが……それはそれでなんだかモヤモヤする。
もしかして、あれは夢だったのだろうか。
いや、あれが白昼夢だなんてありえない。
今でも私ははっきりと覚えているのだから。……あの、やわらかな唇の感触を。