あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました

「葉月さん……」

　肩を突かれてよろけた樹沙ちゃんを支えると、彼女は弱々しく私の名を紡いだ。
　彼女の泣きそうな声を聞き、後先考えずに私はその男性をキッと睨みつけてしまう。

「ちょっと、あなた誰？！」

「は？　アンタこそ誰だよ」

　不機嫌さやイラつきを抑えようともせず、その男性は私に言い返してきた。
　突然介入してきた私のことを、鬱陶しそうにじろじろと見つめてくるので、思わず怯(ひる)みそうになってしまう。

「すみません、心配しないでください。彼氏ですから」

　咄嗟に私の腕を取り、樹沙ちゃんはバツが悪そうに男性との関係を口にした。
　最初に予想したとおりで、この極めて無礼な男性が樹沙ちゃんの彼氏らしい。

「で、アンタは？」

「私は……樹沙ちゃんの同僚です」

「関係ない人間が口を挟むなよ」

　向こうへ行ってろ、とばかりにシッシと手の甲で追い払う仕草をするこの男性に、樹沙ちゃんには悪いけれど私はどうも好感が持てない。

　どうしてこんなに気を高ぶらせているのか知らないが、先ほど樹沙ちゃんの肩を突いているところを目撃してしまったので、このまますんなりと引き下がるのは心配だ。