あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 こんな時なのに、ふと樹沙ちゃんのバイトのことを思い出してしまった。
 彼女はこの彼氏のために夜もキャバクラで働いているのだ、と。

 もしかしたら揉めている原因は、お金のことなのだろうかと勝手に私の頭が推測してしまう。

「お前が粘っても、結婚なんて絶対できねぇからな!」

 ここで“結婚”というキーワードが飛び出した。
 お金ではなくそのことで言い合いになったのかと合点がいった。

 以前から樹沙ちゃんには強い結婚願望があった。早く結婚して幸せな家庭を作りたいと話していた。
 だけど彼氏が首を縦に振らない……そんなところだろうか。

「でも……」

 樹沙ちゃんがなにか言いかけて、ためらうように言葉を飲み込む。

「これ渡しに来ただけだ」

 そう言って、男性は嫌そうに茶封筒を樹沙ちゃんに押し付けるように渡した。

「これ、なに?」

 樹沙ちゃんは震えるような声で茶封筒を握ったまま彼に尋ねる。

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