あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「五万入ってる。それで十分だろ。ガキが出来たのは俺だけじゃなくてふたりの責任だから、あとの手術代は自分でなんとかしろよ」

「それって……」

「何度も言ってるだろ。堕ろせよ」

 一気に、私の頭の中はキャパオーバーになった。唖然、とはこのことだろう。なにも言葉が出て来ない。

 樹沙ちゃんは妊娠していたのだ。だから彼氏に逆プロポーズをして、結婚を急いでいたみたい。
 なのに彼氏は、それに同意しなかった。それどころか、お腹の子を堕ろせと耳を疑う言葉を突き付けたのだ。

「……ヤダ。私、産みたいの」

「いい加減にしろ! こうやって金だって渡してんだろ。俺はこれで、金輪際お前と関わりたくないんだよ!」

 金輪際って……樹沙ちゃんとは別れるつもりだと聞こえる。
 彼の言葉にひとつも愛情が感じられなくて、なぜか私の目頭に熱いものがこみ上げてきた。

「ふざけてんのはどっちなんだよ!!」

 男性が今にも樹沙ちゃんの肩に掴みかかろうとしたときだった。横から新たな人物が乱入し、彼の胸板をドンッと突いた。

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