あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「……架くん」

 いつからこの場にいたのかわからないけれど、乱入してきたのは血相を変えた架くんだった。

「なんだお前は! おい樹沙、俺のほかにも男がいたのかよ!」

「勝手に誤解すんなよ。俺はただの同僚だ!」

 今までに見たことがない架くんがそこにいた。
 こめかみに血管が浮き上がるほど、その表情に怒りをありありと乗せる架くんは、いつもとは全然違う人物に見えた。

 だけど胸板を突かれた彼氏のほうはまったく恐れた様子はなく、フンッと鼻を鳴らして笑うだけだった。

「また同僚かよ。関係ないヤツは引っ込んでろ。これは俺と樹沙の問題だ!」

 吐き捨てるように言われた架くんがギュッと拳を作った。それを目にした私は咄嗟に架くんを制止する。

 万が一殴ったりしたら、もっとこじれてしまう。いくら相手が悪くても、暴力はダメだから。

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