あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「樹沙、あの日お前言ったよな? 今日は付けなくても大丈夫、安全日なの、って。なのに妊娠しやがって。俺は悪くないだろ」

「大丈夫のはず……だったの」

「だから堕ろせばいいんだ」

 簡単に言わないでほしい。産まない決断をすれば、なかったことにできるとでも思っているのだろうか。
 こんな言動をしている男が、結婚しても良い父親になるとは思えないけれど。
『堕胎』というものが、どれだけ女性の体に傷をつけ、心にも大きな傷をつくるのか、この彼氏はまったく理解していない。

 それに、命はもう宿っているのだ。
 樹沙ちゃんのお腹の中に、小さな小さな命が。

「ふざけんなよ」

 ギュッと拳を作ったままの架くんが、静かな口調でまた口を挟んだ。

「自分の女が妊娠して、産みたがってるんだ。それを簡単に堕ろせなんて言うなよ!!」

 架くんの腕を掴む自分の手に力を込めてみたけれど、キレてしまった架くんを止めることはできないようだ。

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