あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「はぁ? だいたい、俺の子どもだっていう証拠はないだろ! 誰の子かわかったもんじゃねぇよ!」

「お前、骨の髄まで腐ってるな」

 架くんが鬼のような形相で男性を睨んでいる。
 だけどそのとおりだ。誰の子かわからないなんて、恋人に向かって言う神経がわからない。本当に最低。

「本気でそう思ってんのか? 樹沙ちゃんが真面目なのは、お前が一番よく知ってるだろ!」

 架くんがそう言い返したところで、樹沙ちゃんの瞳からポロリと涙が零れた。
 彼女は今までずっと涙をこらえて唇をかみしめていたけれど、一粒流れた涙は、堰を切ったようにどんどんと溢れ出る。

「彼女が一途なのは俺たちも知ってる。お前のやってきた悪行だってわかってるんだ」

「悪行? なんのことだかな」

「とぼけんな。自分の女をキャバクラで働かせて金を根こそぎまきあげてるだろ!」

 架くんは納得がいかないとばかりに食ってかかったが、男性は開き直ったまま眉根を寄せている。

「それはこいつが勝手に貢いだんだ。違法でもなんでもないよな? 俺は悪くない」

「……」

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