あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「彼が友人と会社を作りたがっていたから資金を援助していましたけど……それを返してもらおうとは考えていません。私が勝手にやったことなので」

「……そっか」

「それより悲しいのは、彼はおそらく、私のもとには戻ってこない。……そうですよね?」

「………」

 それが言いたいのでしょ?と、樹沙ちゃんが架くんに少し詰め寄る。

「樹沙ちゃん……」

 そんな樹沙ちゃんの背中に手を添えて、彼女が落ち着くように私はゆっくりと摩った。

 こうなったのは架くんのせいではないと、樹沙ちゃんも理解している。
 だけど今は悲しい上に混乱していて、彼女は気持ちをぶつけるところがないのだ。

 あの男性は元々、樹沙ちゃんと結婚するつもりなどなかったのだろう。
 子どもも欲しくなかったのだ。だから彼女が妊娠したと告げても、堕ろせとしか言わなかった。
 そうなると、最初から彼女に対して愛情など欠片(かけら)もなかったのではないかとすら思えてしまう。

 樹沙ちゃんが真面目で一生懸命尽くすから、付き合っていただけ。

 ――― お金を渡してくれるから。

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