あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 そんなことが頭を過ぎり、私まで泣きそうになってしまう。
 樹沙ちゃんは純粋に彼を好きだったのに。
 最後はこんな形で、裏切られるように終わるとは……

「葉月さん……」

 蚊の鳴くような小さな声で、樹沙ちゃんが私の名を口にした。

「急にふーっと、消えてしまいたいって思った経験ないですか?」

「……え?」

「私、学生時代も社会人になっても、たまにそう思うことがあったんです。私なんて消えていなくなっても誰も気がつかないし、それならいっそいなくなってもいいな、って。だけど彼がそれを変えてくれました。私を必要としてくれた。私をかわいいって……愛してるって言ってくれたんです」

 樹沙ちゃんの言葉が私の心の奥底にある感情と共鳴する。

 だからだろうか。樹沙ちゃんの想いが伝わってきて、両目からスーッと涙が零れた。

「愛し合ってるふたりになにか障害があるなら、それを取り除けばいい。例えばそれがお金なら、私も協力して稼げばいい。私たちはうまくいってるから怖いものなどない。そう思い込んでいました」

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