あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
6.突然堕ちて…

―――― 6. 突然堕ちて…

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 あれから三日が過ぎたが、樹沙ちゃんは有給を取って会社を休んでいる。
 社長には、季節はずれの風邪を引いたと連絡が入ったらしい。
 だけどそんなわけがないと思い、私が様子をうかがうべく電話をすれば『夏風邪は口実です』と返ってきた。

 とにかく体調を崩していなくてよかった。
 会社を休んだ原因はこの前の彼氏の件で間違いなさそうだ。集中して働ける精神状態ではないからだろう。

「葉月さん、お疲れ」

 暇を見つけて給湯室の掃除をしていると、そこへ架くんが現れた。

 給湯室でふたりきりというシチュエーションは、(おの)ずと“キス事件”のことを思い出してしまう。
 あれだって、いったいどういう意図だったのか未だに不明だ。

「うん……お疲れ様」

「樹沙ちゃん、あれからずっと休んでるよな」

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