あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 事の経緯を説明すればするほど、架くんはイライラとし、さらに機嫌が悪くなっていく。
 こんなに簡単に騙された私が滑稽で、聞くのもバカバカしいのかもしれない。

「頭悪いよね。キャッチセールスだとわからずについて行くなんて。もう少しで宝石を売りつけられるところだった」

 八十万の指輪は買わずとも、もう少しお手ごろな値段のものなら購入していたかもしれない。その可能性は、ないとは言いきれない。
 それを思うと自分自身が情けなくてポロポロと涙が出てくる。

「架くん、助けてくれてありがとう。これからは騙されないように気をつける。ブスな上にバカだなんて、どうしようもないね」

 途中まで山井くんのことを良い青年だと思い込んでいて、こんな出逢いが意外と“縁”になるのかもしれない……なんて少しでも考えていた私は究極の阿呆だ。

 架くんは未だに繋いだままだった私の右手を痛いくらいにギュッと力を込めて握りなおした。

「葉月さんはお人よしなんだよ。人の心配ばっかりして」

「……うん」

「だけどブスじゃない!」

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