あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「俺、奪ってないから。その、由美ちゃんとかいう子とも付き合う気はない」

 俺は男たちの間を()き分けるようにすり抜けて講堂へと向かう。

 女を奪られたとかどうとか……バカバカしいことこの上ない。
 しかも今の話なんて、あの男が単にフラれただけだ。女も別れたいからって俺の名前を出すなよ、ややこしい。

 きっと、俺が女を寝取ったとでも思っているのだ。
 本当にそうなら文句のひとつも聞いてやるが、顔も覚えていないような女のことで因縁をつけられるのは納得がいかない。

 しかもひとりで話しに来れないのか?
 三人なら俺がビビって謝るとでも思ったのだろう。

 平身低頭で謝って、彼女を貴方様に返します。どうかご容赦ください。と?
 返す返さないって、女は物じゃない。

 こういう厄介事は、大学時代の俺にはけっこうな頻度で起こっていた。
 女がらみで突然見知らぬ男から、なにかと文句や恨み節を言ってこられたが、誤解もいいところだからそのまま無視して終わらせていた。

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