あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 チャラ男とにこやかにパンケーキを食っている。
 デートかよ、と最初はそう思ったけれど、だんだんと男の行動が怪しくなってきた。

 男が鞄から宝石のパンフレットと指輪の現物を出して見せている。ついにとうとう本性を現した。これはキャッチセールスだ。

 0.5カラットの指輪が八十万? ありえないほど高すぎる!
 するともうひとり、ガラの悪い男が現れた。
 そいつは夜の世界にいた男だろうか、俺にはどこか見覚えがあった。

 誰だったか思い出そうとしたのが悪かった。
 葉月さんを助けようとしたときにはもうすでに、チャラ男に暴言を吐かれて傷つき、彼女が意気消沈したあとだった。


 俺は葉月さんとカフェを出て、手を引きながらただやみくもに無言で歩いた。
 駅を越え、彼女がごめんと俺に謝ってきたところで歩みを止める。

 イライラしていた。
 お人よしすぎる葉月さんにも、それをうまく助けられなかった俺自身にも。

 キャッチセールスだと気づいた時点で、是が非でも彼女をあそこから連れ出すべきだったのに、俺はなにをもたついていたのだろう。

< 213 / 273 >

この作品をシェア

pagetop