あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 正直に事実を伝えて、誠心誠意謝ったほうがいいのだろうか。
 それとも、言わずに墓場まで持って行ったほうがいいのだろうか。

 謝ると逆に気分を害されるような気もするし、迷うところだ。
 
 だけど、謝って済むのだろうか ――― 私自身の気持ちが。


 きっと私は架くんを好きになってしまっている。

 路上でキスをされたときから。
 いや……私を守ると言って、キャッチセールスから助けてくれたあのときから。

「葉月さん、大丈夫ですか? すごい汗ですよ?」

「エアコンのせいかな。節電してるから暑いよね」

 隣のデスクに入る樹沙ちゃんが気遣うように声をかけてくれる。
 だが、さすがに仲良しの樹沙ちゃんにも、この件は相談できないでいた。

 彼女のお腹には赤ちゃんがいるので、心に負担をかけるようなことは少しでも避けたい。

 どうやら樹沙ちゃんは産む決意をしたようだ。
 だからできるだけ穏やかにゆったりと過ごし、元気な赤ちゃんを産んでもらいたいと私は心から願っている。

「架くんを好きになってしまったの。杜村社長に悪いし、どうしたらいいと思う?」などと、重い相談はいくらなんでもできない。

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