あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「ありがとう」

 お礼を言うと、架くんは無言でにこりと微笑んだ。
 彼の何気ない仕草ですらカッコいいと思ってしまうのだから、これは相当重症ではないだろうか。

「シュージ!!」

 駐車場まであと少しというところで、私たちの背後から女性の声がした。

 私と架くんは、思わずその声に反応してしまう。
“シュージ”というのは……架くんのことを呼んでいるのだと、ふたりともすぐに理解したから。

 後ろを振り向くと、綺麗な女性が泣きそうな顔で駆け寄ってきていた。

「……純子さん」

 困ったような顔で、架くんがポツリと女性の名を口にする。

「やっと見つけた!! どうして急にいなくなったの? 私、シュージに会いたくて必死に探してたのよ!」

 切羽詰まった感じのこの女性の肩に、架くんは慰めるように手を添えた。

 ――― 触らないでほしい。

 咄嗟にそう思った理由は、ただの嫉妬だ。
 それを自覚すれば、切ないような苦しいような、複雑な感情が胸を締め付ける。

< 219 / 273 >

この作品をシェア

pagetop