あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「葉月さん、ごめん。先に行って車の中をエアコンで冷やしといて？」

　架くんが苦笑いの笑みをたたえつつ、手にしていた車のキーを私に託す。
　私は心配の色を隠せないまま、コクリとうなずいて車へと向かった。

　炎天下で熱せられた車の中は、とんでもない暑さだった。
　エンジンをかけてエアコンを全開にするけれど、すぐには車内の温度は下がらない。

　架くんがくれたお茶を飲み、私は彼が来るのをひたすら待った。
　ひたすら、と言っても、私には長い時間に感じただけで、時計に目をやれば五分そこそこしか経っていない。


　あの女性はいったい誰なのだろう。
“シュージ”という名前で架くんを呼んでいたところから察すると、ホストである架くんを知る女性だ。
　
　ふたりでどんな話をしているのか、そこも気になる。
　以前、付き合っていたのだろうか。

　いや、急にいなくなった架くんを探していたと言っていたし、付き合っていたのなら相手に黙って突然姿を消すようなことはしないだろう。
　だけど、親しい関係だったようにも見えた。

　あぁ、もうやめよう。考えれば考えるほどネガティブな方向へ行きがちだ。
　どんどん悲しくなってしまうなら、強制的に思考停止してしまおう。

　あの女性のことも、この制御不能で重症な自分の感情も、全て強制終了。

　そうすれば……いずれはこの思いからも解放されるだろうか。

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