あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 以前の出来事を回想しながら、偶然聞いてしまった事実を告げると、架くんは驚きながらも顔を朱に染めていく。

「あれを聞かれてたのか」

「全部じゃないよ。部分的に!」

「……」

 盗み聞きをしようとしたわけではないのだと訴えれば、架くんは赤い顔のまま気が抜けたようにヘラリと笑った。

 あのときの言葉が社長に対してではないのなら、誰に向けての言葉だったのか……

「ダサいな、俺」

 架くんの大きな左手が、私の右手をやさしく包み込むように覆った。

 私も同じタイミングで架くんに触れたい衝動が生まれたところだったから、こうして手を握られると、胸の中がキュンとする。

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