あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 なんだか表現があからさまに生々しい気がして、妙に恥ずかしい。

「なにか適当につけて見せてよ」

「いや、でも……」

「いいから! 試しにつけるだけよ。持って帰れとは言わないから」

 昔から、彼女にゴリ押しされると断れない。
 私は苦笑いの笑みを浮かべ、半分あきれながらコクリと頷いた。

「これは昔、パリで買ったやつだ。()めてみて?」

 そう言って社長に差し出されたのはプラチナ台の指輪だった。
 大粒ではないにしろ、宝石があちこちに散りばめられているデザインのものだ。どこかのブランド品だろう。

「葉月、指のサイズは?」

「私、指輪をしないのでわかりません」

「ふぅ~ん、そっか。私の指輪、入るでしょ」

 あっという間に社長は私の左手を引っ張って、薬指にそれを嵌めた。

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