あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「これ9号なんだけど、ちょっと葉月には緩めだね。でも似合う」

 たしかに一番太い関節の部分でも、指輪がちょっぴり泳いでいる気がする。
 だけど試しで嵌めて遊んでいるだけなのだから今は関係ない。その指輪のデザインと煌びやかさを私は楽しんだ。

「ゴールドもあるよ? こういう細いタイプは重ね付けもできるの」

 そこから社長は、まるでコーディネーターのようにあれこれと出して私の指に嵌めさせた。
 指輪だけで、いったいいくつ持っているのだろう。彼女のコレクションの数に驚かされる。

「よし。戻ろうか。葉月がいないと、架が寂しがるもんね」

 気が済んだのだろうか。社長はジュエリーボックスをパタンと閉じて腰を上げた。

「架!  “ハチ”」

 部屋を出てるとすぐに、社長が架くんに対して大きな声を出した。最後に謎の言葉を発したのが気になる。

 リビングに戻ってみると、架くんは片手で顔を覆って溜め息を吐き出している。
 いったいどうしたのか、私にはさっぱりわからない。

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