あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「だいたい、別れ話をするなら直接俺に言えばいいだろ。そんな話をされたところで応じないけどな。でも俺より先に凪子さんに言うのはおかしいって!」

「ま、待って! 私……別れたいなんて言ってない」

「はぁ?!」

 もうダメかもしれないと心の中では思ったけれど、私から意思表示した覚えは一切ない。
 それに架くんの言うとおり、先に社長に話すのは順番が違う。

「まさか……」

 私を開放するように体を離すと、架くんは疑いのまなざしを社長に向けた。

「葉月が俺と別れたいけどどうしたらいいか相談してきた、って……さっきのあの電話は?」

「あれね、嘘に決まってるでしょ」

「凪子さん!!」

「ウジウジしてるアンタも悪い。どうして今みたいに素直に気持ちが言えないのよ。バカね」

 一刀両断。社長に打ってつけの言葉があるとすればそれだ。

 私と架くんが喧嘩をし、何日も口をきかない姿を、社長は見ていられなかったのだろう。
 だから私をここに呼び出す前に、架くんに嘘の電話を入れて会社に戻るように仕向けたのだ。

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