あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「受付を済ませたあと、ぜひふたりで語り合いましょうよ。僕の今までの怪奇体験をお聞かせしますから! いやぁ、いいですよね、こういうイベント。オカルト好き同士、話も弾むしすぐに仲良くなれますよ!」

 この人はきっと、こちらの話を聞かないタイプだ。
 私は怪談話は苦手だからそれは困る。だけどそれは言えないし、どうしようか……

 どうやってこの男性から自然と離れたらいいかを、愛想笑いを浮かべつつも頭をフル回転させる。

 トイレに寄りたいので私に構わず先に中に入っていてと伝えるのが一番いいか。
 そう思いついて、口を開きかけたときだった。私の右斜め後ろから突然、ドンッと大きな衝撃が来た。

「わっ!」

 後ろから押されたために前につんのめる格好になったけれど、なんとかその場に倒れこむのだけは免れた。
 危ない。あやうく派手に転ぶところだ。

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