あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました

　どうやら人にぶつかられたようだが、接触した右の肩や腕が痛い。
　ロビーは広く、人が混みあってもいないのに、なにごとかと後ろを振り返った。

「あ、ごめんなさい！　すみません！」

　ぶつかってきたと思われるやぼったい男性が謝りの言葉を口にする。
　だけど彼が持っていた鞄を地面に落としたのか、その中身がバラバラと辺りに無残に散らばっていた。

　私の足元にもボールペンやメモ帳などの細かいものが落ちていて、這いつくばってそれらを拾おうとする彼にならい、私もしゃがみ込んだ。

「本当に申し訳ない。お怪我はありませんか？　あ、そちらの方はどうぞお先に行ってください」

　私の少し先にいたオカルト好きな男性に向かって、衝突してきた人が気を利かせて声をかけたため、その男性は戸惑いながらも私たちに会釈をするとそのまま行ってしまった。


　無意識にため息が出た。
　ぶつかられたのは後ろからだったし、彼がすぐにしゃがみ込んだためにはっきりと顔が確認できなかったけれど、どうにも聞き覚えのある声だ。